ゾムビィ・ダンス

久生十蘭の『復活祭』という短篇を読んでいたら、こんな一節が出てきた。


 男と女の組が天上から糸で釣された操人形さながらに、死んだようなメロディにつれて千鳥足でよろけまわり、男と女が重なりあってぐったりと床にしゃがみこんだと思うと、起きあがってまたのろのろと歩きだす。魂のぬけた、人間の抜殻が散歩しているような痴呆的なダンスだった。
「これはなんというダンスなの」
「ゾムビィだよ。アメリカで戦前に流行ったワルツのニュウ・スタイルだが、あんなものどうだっていい。こっちはこっちだ」


ちなみに、この小説の初出は1949年とのこと。


1930年代後半〜1940年代前半頃に、ゾンビという名のワルツ風のダンスが流行ったのか、ネットで調べてみたが、何も引っかかってこない(だいいち、ゾンビがワルツ風の動きをしているというのが、いまいちピンと来ない。どうしても"Thriller"のイメージが強いからかもしれないが。しかし、上の引用で記述されているダンスの様子は、われわれの知るゾンビの動きに近い)。
映画の中で最初にゾンビが登場したのは1932年の『恐怖城』ということなので、その前後に映画以外のカルチャーにもゾンビが現れていた可能性はあるだろう。


ということで、この件は捜査本部を設けて引き続き調査する予定。。。